Research
scroll
Theme ー 研究テーマ ー
振動型マイクロインジェクション・システム
Vibratory Microinjection System:VMS
SUMMARY
研究概要
研究背景
遺伝子組換え動物の作製効率は非常に低い
最も効率が良いとされるマウスでも約1%程度
最も効率が良いとされるマウスでも約1%程度
遺伝子組換えの第一段階として外来遺伝子を細胞内に導入する必要がある
種々の遺伝子導入法の中でも、前核インジェクション法が最も組換え効率が高いとさ れるが、その作業効率は低い
前核インジェクション法
受精卵の前核(メスあるいはオス由来の核)に先端径約1~2 mmの鋭く細い針(マイクロピペット)を刺入して外来遺伝子を前核内に直接注入する方法細胞に導入した遺伝子の全てが核内に導入されるので、組換え効率も高い しかい、熟練技術者でも1日800個の受精卵処理が(肉体的・精神的に)限界とされるので、作業効率(単位時間あたりの処理細胞数)は低い
受精卵の前核(メスあるいはオス由来の核)に先端径約1~2 mmの鋭く細い針(マイクロピペット)を刺入して外来遺伝子を前核内に直接注入する方法細胞に導入した遺伝子の全てが核内に導入されるので、組換え効率も高い しかい、熟練技術者でも1日800個の受精卵処理が(肉体的・精神的に)限界とされるので、作業効率(単位時間あたりの処理細胞数)は低い
作業仮説
マイクロピペットに縦振動を加えることによって、インジェクション操作の作業効率を向上できないか?
振動型マイクロインジェクション・システムとは?
- 既存のピエゾマイクロマニピュレータとは原理的、機構的、機能的に全く異なる
- マイクロピペットに縦振動を加えつつ、標的細胞の核内あるいは細胞質内に刺入し、 外来遺伝子を注入する方法 現在検討中の付加振動数は0-100 kHzの範囲であり、任意の周波数を選択可能
成果
- マウス受精卵を対象とした比較実験:対照群は従来型(無振動)マイクロインジェクション
- 透明帯、細胞膜、核膜の刺入が容易
- インジェクション操作時間が有意に短い
- 作業効率の向上
- 核内DNA注入時間が有意に短い (DNA注入速度が有意に速いため より大きなDNA断片やより粘性の高いDNA溶液が注入可能)
- 操作後の受精卵の生存率や発生効率が高い
- 核引き現象が少ない
- 核引き現象 マイクロピペット先端に核DNAなどがこびりつき、ピペット抜去時に核DNAの一 部を引きずり出すこと これを起こした細胞は死亡 一度核引きを起こすと、核引きを繰り返す したがって、マイクロピペットの交換を余儀なくされる
- 1本のマイクロピペットが長持ちする
- マイクロピペットの交換頻度が少ない
「遺伝子組換えの効率向上を目指して将来的にはロボット化までを視野に入れています」
SUMMARY
現在行っているのは、遺伝子組み換え動物を作製する上での効率向上を目的とした研究です。
ライフサイエンスの分野では、マウスに新しい遺伝子を導入する、あるいはマウスが本来持っている遺伝子を除去して各遺伝子特有の効果・作用を検証するという分子生物学的な手法は当たり前のものになっておりますが、そのDNA操作法として有用なのが受精卵の前核に直接DNAを導入する「マイクロインジェクション法」です。これは卵子と精子が合体した直後の前核に細いピペットを使ってDNAを注入するという方法で、他の方法、例えば電気的に細胞膜に穴を開けてDNAを導入する方法や細胞に接触せずにDNAを浸透させると いった方法に比べて、細胞質の前核に直接DNAを注入するため人為的な操作の中では成功率が高いために広く使われています。
しかし、現時点で最も効率的と思われているこの方法ですら、目的遺伝子を機能させたマウスが生まれる確率は非常に低い。さらに、ピペットを使ってDNAを前核に正確に注入する作業も熟練した研究者でなければ難しく、経験の浅い者と熟練した技術者の結果を比べると三ヶ月の生存率に60%近く差が出ることや、研究の現場では操作に使うピペットが手作りというのがほぼ常識となっているなど、「マイクロインジェクション方式」というやり方自体が、習熟に時間と経験が必要な技術「職人技」であるという問題がありました。
その非効率性を解決するために我々が着目したのが、ピペットに微細な振動を加え、より容易な操作を可能にした「振動型マイクロインジェクション」です。注入用のピペットに可聴域から超音波領域までの振動を加えるこの方法を使うことで、細胞壁を容易に貫けるようになり経験が少ない人でも操作を簡単に行うことができます。また非振動型のものと比べると、ピペットを刺してから抜くまでの時間が短縮されますので、受精卵の障害も減少する。同時に、受精卵に与えるイメージを最小に抑えることができるため、結果として生存率も高めることにもつながります。
現在は、振動周波数や振動幅など、どれくらいの数値がベストなのかということを模索している段階ですが、少しずつ成果は出ています。
将来的には"素人でも簡単に操作できる"というレベルを目指しています。機械のセットアップや設定など専門的な知識がなくても扱える、すべてを機械に委ねることができるインジェクション・ロボットのようなものができればと考えています。
ライフサイエンスの分野では、マウスに新しい遺伝子を導入する、あるいはマウスが本来持っている遺伝子を除去して各遺伝子特有の効果・作用を検証するという分子生物学的な手法は当たり前のものになっておりますが、そのDNA操作法として有用なのが受精卵の前核に直接DNAを導入する「マイクロインジェクション法」です。これは卵子と精子が合体した直後の前核に細いピペットを使ってDNAを注入するという方法で、他の方法、例えば電気的に細胞膜に穴を開けてDNAを導入する方法や細胞に接触せずにDNAを浸透させると いった方法に比べて、細胞質の前核に直接DNAを注入するため人為的な操作の中では成功率が高いために広く使われています。
しかし、現時点で最も効率的と思われているこの方法ですら、目的遺伝子を機能させたマウスが生まれる確率は非常に低い。さらに、ピペットを使ってDNAを前核に正確に注入する作業も熟練した研究者でなければ難しく、経験の浅い者と熟練した技術者の結果を比べると三ヶ月の生存率に60%近く差が出ることや、研究の現場では操作に使うピペットが手作りというのがほぼ常識となっているなど、「マイクロインジェクション方式」というやり方自体が、習熟に時間と経験が必要な技術「職人技」であるという問題がありました。
その非効率性を解決するために我々が着目したのが、ピペットに微細な振動を加え、より容易な操作を可能にした「振動型マイクロインジェクション」です。注入用のピペットに可聴域から超音波領域までの振動を加えるこの方法を使うことで、細胞壁を容易に貫けるようになり経験が少ない人でも操作を簡単に行うことができます。また非振動型のものと比べると、ピペットを刺してから抜くまでの時間が短縮されますので、受精卵の障害も減少する。同時に、受精卵に与えるイメージを最小に抑えることができるため、結果として生存率も高めることにもつながります。
現在は、振動周波数や振動幅など、どれくらいの数値がベストなのかということを模索している段階ですが、少しずつ成果は出ています。
将来的には"素人でも簡単に操作できる"というレベルを目指しています。機械のセットアップや設定など専門的な知識がなくても扱える、すべてを機械に委ねることができるインジェクション・ロボットのようなものができればと考えています。
Theme ー 研究テーマ ー