東京電機大学

理工学部 電子情報・生体医工学系

臨床医用科学研究室

Introdution
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"From Cells to Robots"
-「細胞からロボットまで」-
現在興味を持って研究している領域を端的に表すとなると「細胞からロボットまで」となります。主な研究テーマは以下の4つで、各テーマの詳細や実際はそれぞれのページを閲覧して頂くとして、ここではまずそれぞれを簡単に説明させて頂きます。
  1. 器械出し看護師ロボット(Scrub Nurse Robot)システムの研究開発 "理想的"な器械出し看護師(外科手術において執刀医に滅菌済みの手術器具やガーゼなどを提供する看護師)を目標として、そのロボット化を研究しています。深刻な器械出し看護師不足が背景にあります。
  2. 振動型マイクロインジェクション・システムの研究開発 新しいタイプの遺伝子導入法で、遺伝子組換え動物の作製効率向上を目指しています。特に、マウスの遺伝子組換えは現在の医学や生命科学では必須の手段となっています。
  3. 心機能回復促進型左心補助人工心臓の研究開発 新しいコンセプトの補助人工心臓で、不全状態にある自己心の仕事をその能力に見合ったレベルに細かく設定できるので、不全心の機能回復を促進させます。
  4. マグネタイトの抗血栓性の研究 強磁性体であるマグネタイトに血液を凝固させにくい性質があることを発見しました。その仕組みの解明と医用材料としての応用を研究しています。
現在は工学系の学生の教育に従事しており、臨床に携わっていた時期とは全く異なる経験を積み、新しい刺激もたくさん受けています。以前は、心臓血管外科医や一般外科医の経験から主に治療に関する研究を行ってきていましたが、最近では研究テーマⅠやⅡのような治療以外の研究も行うようになりました。医療の最前線から離れたことも理由の一つかもしれませんし、前記のように新しい経験を積んだせいかもしれません。しかし、臨床医としての経験がそのテーマに反映しているのは間違いありません。テーマⅡは一見すると臨床経験とは全く無縁のように見えるかもしれませんが、無縁ではありません。私が前核インジェクション(外来遺伝子を受精卵の前核に注入する方法)を初めて見学し、インジェクション操作によって半数近い受精卵が死亡するという事実を知ったときに最初に頭に浮かんだことは、その死亡率を10%でも20%でも減らせないだろうかということでした。
臨床医ならば目の前の患者を一人でも多く助けるのが目標ですし、そのために地道な努力を行うのは当たり前です。特に、私が心臓血管外科医として働いていた1980年代から90年代は、日本の心臓血管外科はまだ今日のような完成の域には達していず、どのようにすれば少しでも手術死亡率を減少させることができるのか模索されていた時代であったように思います。このような経験が私の脳髄に染みついていたためか、とっさに前記のような感想が頭に浮かんできたものと思います。 最後に、現在の私は医学と工学の境界領域に属していますので(境界領域といっても私が関与できるのはそのうちのごくわずかな領域でしかありませんが)、医学と工学の架け橋のような存在になれればと思っております。